【ワーキングメモリー(作業記憶)のパワー!第二言語の理解と生成に及ぼす驚くべき影響を解き明かす】

英語学習をする際に、記憶力について気になる人もいるのではないでしょうか。作業記憶(WM:Woking Memory)は、言語能力の発達や処理を含むさまざまな認知プロセスにおいて重要な役割を果たします。しかし、その第二言語(L2)の学習やパフォーマンスへの影響の程度は議論の的となっています。
英語学習についてのパフォーマンスについて満足していますか?結論から申し上げますと、ワーキングメモリーを鍛えることは、英語学習にとってメリットがあるということです。ただし個人の習熟度の差によって、ワーキングメモリーの影響は違ったことが伝えられおります。時間がない方は、下記の詳しくは、本記事の「今後の展望」をご一読ください。

イントロダクション:
本記事では、引用した論文で、3,707人の参加者を対象とした79の研究のメタ分析を行い、既存の研究を数量的に総合することを目指しています。その結果、WMとL2の処理能力および能力の結果との間には正の関連性が存在することがしめされています。推定される母集団効果サイズ(ρ)は0.255です。さらなる分析では、文献検索で特定された潜在的な共変量(参加者の特性、WM測定の特徴、基準測定の要素、および発表状況)がWM-基準関係を修飾するかどうかを評価しました。共変量分析の結果、WMの実行的制御(保持ではなく)成分および言語的(非言語的ではない)WMの測定はより大きな効果サイズを示しました。

発表バイアスは最小限であり、WMとL2の結果との間には堅牢で正の関連性があることを示しています。これらの結果の意義について、WMとL2の処理およびL2の能力の発達の理論モデルにおける意義について議論します。

作業記憶とその重要性:
WMは、気を散らす情報の存在下で情報の制御、調整、積極的な維持を担当する認知システムです。WMは、短期記憶に類似した保管ベースのシステムと、保持された情報と長期記憶ストアの間の情報を制御する実行的な注意システムからなります。言語理解を含む多くの認知的タスクは、WMのリソースに依存しています。そのため、WMはL2の処理や学習に関連していることは驚くことではありません。ただし、その効果の大きさとその効果を引き起こす具体的な要素(つまり、実行的制御と短期保持のどちら)については、研究ごとに一貫性がありませんでした。このメタ分析は、これらの不一致を解決し、WMがL2のパフォーマンスに関連している条件を特定することを目指しています。

メタ分析の概要:
このメタ分析は、WMとL2の処理および能力の関係を調査した研究を包括的にレビューしています。分析には、3,707人の参加者を対象とした79の研究が含まれており、748の効果サイズが提供されました。その結果、WMとL2の処理および能力の両方との間に正の関連があり、推定される母集団効果サイズは0.255です。共変量分析では、文献で特定された参加者の特性、WM測定の特徴、基準測定の要素、および発表状況などの修飾因子を評価しました。これらの分析では、実行的制御成分のWMと言語的なWMの測定がより大きな効果サイズを示すことが明らかになりました。発表バイアスは最小限であり、WMとL2の結果との間には堅牢で正の関連があることを示しています。

作業記憶の理解:
WMは、気を散らす情報の存在下で情報の制御、調整、維持を担当する認知システムです。それは、空間情報を扱う視覚空間WMと、言語情報を処理する言語WMという2つのサブシステムで構成されています。最近のプロセス指向のモデルでは、直ちにアクセス可能なメモリを保持する注意の焦点と、活性化されたが直ちにアクセス不可能な長期記憶からなる2層構造を提案しています。WMの内容が操作されるため、注意の制御プロセスは、情報処理中にメモリを操作し、注目、更新、切り替え、抑制する役割を果たします。ここから先、本記事では「注意の制御プロセス」と「実行的機能」を同義語として使用し、WM容量の変動に関するEngleとKane(2004)の高度に影響力のある実行的注意理論と一貫しています。

作業記憶と言語理解の関係:
WM容量は、言語理解のパフォーマンスを信頼性のある予測指標とすることがわかっています。WM容量が大きい人は、第一言語(L1)および第二言語(L2)の語彙学習(英単語など)、文章執筆能力(ライティング)、読解力(リーディング)、聴解力(リスニング)などで優れた結果を示します。個人のWM容量の違いは、新しい情報の記憶、推論の生成、長期記憶からの知識のアクセス、新しい情報と既存の知識の統合など、テキスト理解プロセスのバリエーションに寄与します。WMはこれらの広範な認知プロセスと能力において重要な役割を果たすため、認知と言語学習の成功において最も重要な要素の1つとされています。

作業記憶容量の測定:
WM容量は、保管と再生能力(単純スパンタスク)や追加の処理要求(複雑スパンタスク)を測定するタスクを通じて評価されます。複雑スパンタスクは、情報を処理しながらアイテムの列を記憶する必要があるタスクであり、言語理解の予測指標として単純スパンタスクよりも優れていることが示されています。これらの結果は、WMの実行的制御成分がドメイン一般的なシステムであるという考えを支持しています。

以前の研究と習熟度レベル:
第二言語(L2)の処理には、第一言語(L1)の処理よりも多くの認知リソースが必要です。したがって、WM容量が大きい人ほど、L2の処理タスクで優れたパフォーマンスを示すことは理にかなっています。いくつかの研究では、WMスパンが大きい低習熟のバイリンガルは、WMスパンが小さいバイリンガルよりもL2の処理能力が高いことが示されています。しかし、高習熟のバイリンガルを対象とした研究では、WMスコアが高い人々においてL2の処理の優位性が明確ではないという結果もあります。

今後の展望:
このメタ分析は、WMとL2の処理および能力の間の正の関連性を強力に支持しています。特に実行的制御成分のWMがL2のパフォーマンスに重要な役割を果たしていることが示されています。言語学習における個人のWM容量の違いを考慮することは、L2の能力発達の個人差を理解する上で重要です。将来の研究では、WMとL2の関係のメカニズムを探求し、習熟度レベルの役割をさらに調査し、WMをターゲットとした介入がL2の学習とパフォーマンスの向上にどのような効果をもたらすかを検証する必要があります。

まとめ:
作業記憶は、第二言語の理解と生成に重要な認知リソースです。このメタ分析は、作業記憶とL2の処理および能力の間に正の関連性があることを強力に支持しています。特に実行的制御成分の作業記憶がL2のパフォーマンスを助ける上で重要な役割を果たしています。作業記憶の役割を理解することで、言語教育のアプローチや作業記憶をターゲットとした介入戦略の開発に役立ちます。個人の作業記憶容量の違いとL2の処理への影響を考慮することで、効果的な言語習得と使用を促進するための戦略を設計することができます。

参考文献:
[Working memory and second language comprehension and production: A meta-analysis]

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